July 06, 2008

「悪の華」(新堂 冬樹)

ブックオフで500円で売っているのを見つけ、やった!と思っていたら、残り200ページというところで外に置き忘れてしまった。それで再び新品を900円で買うという、失態をしてしまったおれ。

自分を責める以外ない。おれはよく本をいろんなところにおいてきちゃうんだよね。買い物してレジで財布取り出すために手に持っていた本を置いてそのままレジを後にしたり、荷物をバックに入れるのに中の本をいったん取り出し、そのまま入れ忘れたりとか。愚かすぎます、おれ。この前読んだ「枕女優」とちがって、ノアール全開のこの作品。でも馳作品の人物のような劣等感で鬱屈し、社会に溶け込めない、ともすれば文学的な絶望感というより、登場人物はハードボイルドのようなアウトローたち。みんなあまりにも性格が極端で、片桐の、おれは若いころ空手家五人を素手で倒したことがある、なんていう虚勢はもうギャグにしか見えない。主人公ガルシアが日本に逃げてきて、たった一年でおれがわからないようなとても難しい単語を使い、作家が書いたような流暢な言い回しで日本語をしゃべるのも、あれ?ってかんじ。ちょっとやりすぎでは?まあ、そんなことどうでもよいですね。

もっとどろどろして救いようのない話かと思ったら、かなり一般受けしそうな感じです。映画にもできそう。とくに後半の上海、福建マフィア、やくざ、主人公たちの戦闘シーンは面白い。まさに手を汗握るって感じ。もう、ここ読むためにそれまでの数百ページがあるって感じ。ところでこの作品には続編「聖殺人者」が出てます。シリーズ化するかな。もちろん読むよ。

でもこれもみんなのいう新堂ワールドではないんだろうね。ということで傑作といわれているひとつ「ろくでなし」を読みます。

|

July 01, 2008

「警察庁から来た男」 (佐々木 譲)

「笑う警官」に続く、道警シリーズ。今回も汚職がからんだ事件が展開される。津久井や佐伯も再び登場。

おれは「笑う警官」よりこっちのほうが面白いと思ったよ。二つの捜査の状況が交互に繰り返されるので、場面の切り替えも面白いし。でも前作を読んでおいたほうが分かりやすいだろうから、「笑う警官」を読んでおいたほうがいいかもね。今回はススキノの風俗街が出てきて、おれの実家の近所だからやっぱ望郷の念に読んでいて駆られるね。ラストのシーンは帰省の際必ず行くところだから、情景がどの部分よりリアルに頭に描かれる。

ドロドロ感がなく、軽快でさっぱりした感じなので、ノアールばかり読んでいた俺には精神衛生上こういうサスペンスも必要だよ。できればシリーズ化して欲しいな。

文庫版もでてるよ。

|

June 30, 2008

伊豆のスタンド使い

荒木さんの絵は好きだけど、「伊豆の踊子」には合うかなあ…
漫画家が描く表紙といえば、角川文庫でわたせしぞうが描いた漱石作品の表紙が作品に合っていて好きだったな。

リンク: 「伊豆の踊子」表紙が“ジョジョ風”に!? 荒木飛呂彦さんが描く - 速報 ニュース:@nifty.

|

June 23, 2008

「四畳半神話大系」(森見 登美彦)

大学入った時ってさ、ものすごい希望にあふれてるじゃん。楽しい友人に恵まれ、すてきな彼女ができ、毎日が刺激的なキャンパスライフ。校舎を出たとき目に入る沈む夕日。夕闇に溶けていくキャンパスの森をバックに彼女と二人恥じらいながら手をつなぎ…と、これから始まるであろう新しい生活にわくわくするよね。でも、いったい何人がそんな夢のような生活を実現した?ほとんどの男はそんな幻想を夢見つつ、夢見たまま卒業していくんだよ。そしてもしあの時こうしていたら、もしあのときあのサークルに入っていたら、って仮定法過去完了で大学時代を顧み、仮定法の中で妄想していく。たぶん昭和の大学生の男どもは大半はこんなもんだろう。いや、そうであってほしいね。モテ系不要。おれが学生時代、学校の近所の4畳半一間に下宿しているやつがいて、よくそいつの家
でこたつに入りテレビを見ながらぼうっとしていた。クラブで遊ぶ人種より、そういった奴らにおれは親近感を覚える。

「四畳半神話大系」、おれの鬱屈した大学生活を思い出され、懐かしくなった。昭和に大学生活を送った人は読んでみるよろしい。森見さん独特の遠まわしでひねくれた文体に最初は慣れなかったけど、読み進めていくうちに気にならなくなってきた。でもこの主人公、傍から見ると結構素敵なキャンパスライフ送っているんだよな。それがむかつく。

いくつかの短編で成っていて、一つ一つのエピソードがパラレルワールドになっている。そして形而上学的になっていき…後は秘密。

でもこれ読むと、やっぱ一人暮らししたかったなあって思う。

|

June 21, 2008

「枕女優」(新堂冬樹)

新堂冬樹の作品を初めて読んだ。今、勢いのあるノアール系の作家らしい。作者自体が芸能プロを経営していたこともあるみたいで(金融業界にもいたとか)、そんな人間が芸能界の裏世界を書くもんだから説得力があるし生々しい。でも最近はそういった裏事情に対する情報ってサブカル系の雑誌にたくさん書いてあるし、女優達は仕事とるために体を売っているとか、整形したとかという噂を聞いても、あまり興味がわかないなあ。もちろん真偽は分からないけど、本当だとしてもどうでもいいっていうのが多くの人の意見なんじゃないの。おれも含めてそういう裏世界の一番欲しい情報って、内容でなく誰がやっているかという実名だと思う。だからフィクションだと、あまり刺激が感じられない。この小説の面白さはそんな芸能界の裏なんかじゃなく、全体に仕掛けられたトリ
ックと主人公の自己破壊に進んでいく心理の過程なんだよね。ネタばれになるので書けないんだけど。

といっても、ちょっと中途半端な感じがしちゃうなあ。もの足りん。大体1ページにおける文字数が少な過ぎ。200ページ近くの作品なのに一日で読み終わっちゃたよ。だったらもっとページ数少なくしてくれよ。

新堂冬樹の作品ってみんなこんな感じ?そんなはずはないだろう。そう思って、今違うやつ読んでるんだけど、これがばりばりノアール。おもしれえ!それについてはまた後日。

|

April 16, 2008

「虚(うつろ)の王」

おれはいつも移動時間や休み時間にしか本を読む時間がなく、家に帰るのは深夜なので家でゆっくり読む時間がない。だから一冊読むのに結構時間がかかる。でもこの「虚の王」(馳星周)は550ページくらいなのに4日くらいで読んでしまった。おれが覚えてる限りここ二年くらいで一番早いペースかも。途中でとめることができなくて、どんどん読んじゃったんだんだよね。他の馳さんの作品と違った、ちょっと幻想的な怖さがあったから面白く感じたのかな。というのも渋谷の売春組織を仕切っている高校生のエイジくんの存在のせい。弱っちい優男の内面に潜む無垢な残虐性。空虚で人にも自分自身をもなんの感情もなく傷つけることができる。だから暴力でしか感情を吐き出せない主人公は彼を恐れ、憧れる。コクトーの「恐るべき子供たち」を思い出
した。映画では実際にあった事件をベースにした「乙女の祈り」とか。乙一の作品でも出てきそう。でもエイジくんの行為はそこまでの怖さはない。登場する前の彼に対する噂が大げさすぎて、どんだけ怖い人間なんだろうって期待しすぎてたせいもあるけど。もっとイカれててもいいんじゃいない?って思っちゃう。

これが単行本で出版されたのが2000年ころ。ちょうどコギャル時代が終焉を迎ようとしているころ。でもたしかにコギャル系の勢いはすごかったけど、当時の渋谷の街って高校生たちに勢いあったかなあ?当時おれは池袋によくいて、渋谷はそんな詳しくないからなあ。たしか池袋はそのころは深夜、マックのテーブルに乗って踊っていたバカギャルがいた。駅周辺の公園が怖かったのもそのころで、どちらかというと渋谷より池袋のほうがやばかった印象がある。まあ、すでに一昔前の話だからよく思い出せないし、気にならないけど。現在の話になると作品が現実の街や文化などと違うと気になって、これは違う!作者は分かってないって言う人も出てくるんだけど、昔の話なら気にならないんじゃない?当時のことが印象的な人たちは違うでしょうが。まあフィクションだし、「不夜城」ほど現実とかけ離れていないけどね。

ノアールバリバリのころの馳作品だから、最後はいつものようにジョットコースター式に絶望へ隋ちていく。もう様式美だね。

※文庫本は光文社と角川の二社が出してる。どういうことだろう?

|

April 15, 2008

「笑う警官」

札幌の街はマンハッタンのように碁盤の目になっていて、ほとんどの住所は南○東○というように座標で示される。だから地域に名前がない。たとえば○○町と言われれば名前からすぐにその街のイメージが浮かぶだろうけど、札幌の場合座標で場所が示されるから、その町名から呼び起されるイメージじゃなく、市内の中の位置が真っ先に頭に浮かぶと思う。この考え、どうよ?

つまり札幌は大体知らない場所でも住所でどのあたりか、そしてそこまでの距離の見当がつく。だから「南○西○から南X東Xへ向かった」と言われればすぐ頭の中の地図でルートをイメージできる。そう考えると、捜査物の話で舞台に札幌ってすごい向いているんじゃないの、なんて思う。(でも、これ書いた後、東京の人に聞いたら、逆に町名が無いから分かりにくいと言われた。なんだ…この説ダメか)

作者の佐々木譲は札幌出身。だから札幌の街並みに詳しく、この「笑う警官」でも住所による移動説明が頻繁に出てくる。他の都市の人がこれ読んでどこまで位置関係が把握できるかな。話は札幌で起きたとある殺人事件。容疑者にされた同僚の警官の無実を晴らそうと影のチームを作り、明日の朝まで真相を突き止めなければならないというもの。事件には道警の汚職が絡らみ、警察全体を巻き込んだ大きな騒ぎになっていく。チームをつくりメンバー各自が一芸を持っている。タイムリミットがある。警察内部の陰謀と策略。組織と戦うチーム。ってあたりで映画にするにはすごい魅力的な話だね。映画化は納得。でも、しょぼい映画になってしまう可能性もあるなあ。いっそハリウッド化すればいいのに。

話自体はかなり大げさで、そんなことありえないだろう!って思うかもしれない。いや実際思ったよ。でもさ、数年前の道警の汚職事件をよく思い出してみると、けっして大袈裟じゃないんだよね。実際はその一連の事件がこの話のベースになっているみたいで、モデルもいるみたい。道警の実際の事件に興味ある人はこれを見て。
http://www5.hokkaido-np.co.jp/syakai/housyouhi/document/

こんなのも:
ttp://straydog.way-nifty.com/yamaokashunsuke/2006/01/post_2782.html

魅力的な人物が多いんでぜひシリーズ化して続けてほしいね。ちなみにシリーズ続編は「警察庁から来た男」。なお、単行本が出た当時は「うたう警官」だったけど、文庫化した時に「笑う警官」に改題しだみたい。映画のタイトルも「笑う警官」らしい。

|

April 07, 2008

「夜を守る」

上野アメ横が舞台。IWGPのアメ横版みたいな感じだけど、自ら進んでガーディアンとなって町を守る積極的な彼らはとてもストレートで、受け身でちょっとひねているIWGPのマコトとは少し違う。やくざが普通にい奴だったりするエピソードを読むと、なんかかなり童話っぽい現実離れした感じするけど、もともとノアール的なものをこの本に求めていないからそれでよい。青春ミステリーだからさ。ストリートガールが、狂った客にシャブ打たれてそこからなにかが狂い始める…とか、あるやくざの依頼した事件を解決したと思ったら実はそのやくざの罠で…とか、イケメンのシンナー中毒の彼女である、美人キャバ嬢が売人達にマワされ…とかそんな話はここじゃ求めてないし。馳星周ならそうするんだろうけど、あくまで爽やか、痛快じゃないとね。

石田衣良の恋愛ものはどうも中途半端な感じがして苦手なんだけど、こういう事件解決ものはやっぱ面白いなあ。ただIWGPが一番好きかな。

この前この本読んで無性に懐かしくなり、上野行っちゃったよ。上京して最初に働いた街だから、ものすごい懐かしかった。アメ横は相変わらず夜が早い。19時ころでほとんどが店じまいの準備してました。

|

April 04, 2008

沢崎シリーズ

前から気になってたハードボイルド作家、原りょうの沢崎シリーズ全4作を読んだ。チャンドラーの影響受けている作家みたいなんだけど、残念ながらおれはチャンドラーを読んだことない。もともとハードボイルドに対する思い入れもない。そのせいか主人公である私立探偵、沢崎の時代性を拒んだ生き方が現代の東京が舞台ではちょっと不自然に感じてしまった。ロック、携帯電話、若者文化、なんかただ単に新しいものを意味なく否定しているような気がして。そして沢崎始め、登場人物たちが辺り構わずタバコをすぱすぱ吸う。人の家でも断りなく吸う。これも懐古主義なの?愛煙家のおれでさえ、それはちょっとっておもっちゃうな。喫煙=男らしいの図式はいかがなものかと。デビュー作の「そして夜は甦る」が出たのが80年代後半。このころはまだ携帯電話もインターネットも普及してなかったけど、21世紀になって急激に時代が変わりこの二つの普及で情報収集、コミュニケーションが劇的に変わった。そのせいか2004年に出た最新作「愚か者死すべし」では沢崎の非時代性にちょっと無理が出てきた気がする。でもたぶんそれがハードボイルドな雰囲気なんだろうね。おれはハードな人間じゃないから違和感を感じるんだろう。でも無理があるといいつつも、登場人物のキャラも、話も面白いからほとんど気にせず読んでしまいます。こういう世界もいいね。携帯でメールを打ちまくる沢崎なんて想像つかない。アナログ人間でいつまでもいてほしい。彼の皮肉たっぷりの遠まわしな言い方も好きだ。

でもどの作品も後半になると一気に複雑な人間関係や、背後関係が解き明かされ、おれの頭では理解しきれなかったりする。複雑すぎて。でもまあトリックを暴くというものでなく、この世界にハマる作品なんだから構わないかな。本格的な推理物ファンなら苦もなく読めるんだろうけど、おれはまだ慣れてない。

一番好きなのは「私が殺した少女」。だけど、シリーズ全体の雰囲気を知るなら三作目の「さらば長き眠り」がいいかもしれないね。沢崎の事務所は西新宿。そのせいか京王線、中央線沿線がよく舞台に登場します。近くに住んでいる人は別な楽しみ方もあるでしょう。しかしデビューして20年経つのに、5,6冊しか出してないって、ものすごい遅筆だなあ。

| | TrackBack (0)

February 26, 2008

「雪月夜」

単行本でたのが2000年だから、まだ初期のころの暗黒面全開の馳 星周作品になるのかな。文章もそんな感じで今とちょっと違う。「不夜城」の流れをくんでいるけど、舞台が歌舞伎町でなく北海道の根室ということもあってかなり叙情的。静の中の暴力。

根室の納沙布岬から見える歯舞諸島を見ると国境という言うものを意識せずにはいられない。宗谷岬とともに日本から他の国が見える数少ない場所。二つとも、加えて領土問題が絡んでいるので、他国の領土なのか自国の領土なのか分からない複雑な思いが岬から観ていてわき起こる。学校の授業でロシア語を教えるところが多く、それほど根室とロシア人の付き合いは深いらしい。おれは2,3回バイクで行ったことがあるけど、繁華街や港に出てないせいかロシア人見たことないなあ。花咲ガニはまじうまいぞ!

北の小さな町の描写はやっぱうまい。さすが道産子。その雪に覆われた厳寒の街の中で、ロシア人を巻き込んで鬱屈した欲望が交差する。ラストは馳さんらしいかな。でもおれにはやっつけ仕事みたいに思うことも。でもそれまでの流れが面白いし、人間がだれでも持っている負の要素が爆発している部分に引かれてしまう。つまり、おれ自身持っている暗黒面と登場人物のそれがシンクロするんだよ。フィクションの世界だと、おれも彼らと同じような行動をとっていてもおかしくないわけ。でもまあ、格差社会の上の人たちには、違う人種たちによる見世物的な世界に映るんだろうね。

にしても、根室の人たちは、これよんでどう思ったんだろう。

|